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サッカーフォーラム in 兵庫
第一回「世界のストライカーと語る、世界のサッカー」
第二回「ピッチから見た世界のサッカー」
第三回「世界のサッカー、子供たちに夢を」
第四回「世界のサッカー、頂点に立つのは?」
第五回「世界への架け橋、サッカー!」
第六回(最終回)「ようこそ世界のサッカー、市民みんなで盛り上げよう!」

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サッカーフォーラム in 兵庫
第二回「ピッチから見た世界のサッカー」
第二回「ピッチから見た世界のサッカー」
日時:2001年8月19日(日) 13:30開演
会場:兵庫県民会館「けんみんホール」
主催:兵庫県サッカー協会、神戸新聞社
共催:神戸青年会議所、デイリースポーツ社、サンテレビ、AM神戸
後援:兵庫県、同教育委員会、神戸市、同教育委員会
協力:ヴィッセル神戸、FC JAPAN

第二回フォーラムのテーマは「ピッチから見た世界のサッカー」。今回はヴィッセル神戸のサントス選手、1級審判の辺見康弘氏、大西弘幸氏をゲストに迎え、選手と審判、双方の立場からワールドカップ、そしてサッカーについて語っていただきました。


■ブラジルでのワールドカップの盛り上がり
■審判の目から見たサッカー
■ワールドカップとルールの歴史
■カメラが証明した、正しいジャッジ
■鉄人・サントスに聞く、現役でありつづける秘訣

 
 

■ブラジルでのワールドカップの盛り上がり

――さて、ワールドカップといえばオリンピックを凌ぐ世界的なビッグイベントですが、一体どんなものなのでしょうか。

賀川浩(以下賀川): ワールドカップ自体が、世界最大のお祭りですよね。1ヶ月にも及びますので、「あまりにも大会が大きくなりすぎて、決勝戦の頃は選手が疲れていて面白くない」という声も聞こえてきますが、これほど大きくて楽しいお祭りというのは、世界にそうはありません。

サントス: ブラジルでは、間違いなく最大のスポーツイベントです。開催期間中は店も閉まり、学校も休みで、国中がストップしてしまいます。試合中はテレビを見て、そしてチームが試合に勝つと通りに出て盛り上がり、サンバを踊り花火を上げたりします。

賀川: 南米はどこもそうですよね。特にブラジルは、勝った翌日は祝日でなくても皆勝手に休んでお祭り。ブラジルで働く友人によると、ワールドカップでなくても代表の国際試合の日は誰も仕事に来ないそうです。

――過去4度優勝しているブラジルは、サントスさんが10歳の時に3度目の優勝をしていますが、その時、1970年の記憶というのはありますか?

サントス: 私が住んでいたのは田舎でしたから町にはテレビがなく、試合はほとんど見られませんでした。しかし町全体が盛り上がっていたので、私も騒いでいましたね。ペレ、ガリンシャら素晴らしい選手を見て、「サッカー選手になりたい」と思ったものです。

賀川: 1970年だと、テレビよりもラジオの時代ですね。人口1900人の町に2台ほどでしたから、テレビのある家は玄関から通りまで黒山の人だかり。でも、ブラジルは点が入るとどこかで花火が上がりますから、試合を見ていなくても(試合の状況は)分かったでしょうね。
ペレのいた70年のチームは、ディフェンスはあまり良くなかったけれど、前(FW)が素晴らしかった。イタリアとの決勝の1点目は、小柄なペレが左のフルバックに競り勝ってヘッドで入れたもの。瞬間瞬間のイマジネーション、ぱっとひらめいて出てくるプレーというのがブラジルのすごさですよね。

――子供の頃からボールで戯れるのが当たり前だそうですが、そのあたりは日本とは全然感覚が違いますね。

賀川: サントスも、お母さんのおなかの中からボールを持って生まれてきたんじゃないの(笑)?

サントス: 子供の頃はおもちゃがなかったので、ボール遊びが日常。でもお金がなかったので、ボールと言っても自分達の靴下に雑巾などを突っ込んだものでした。オレンジやレモンを使ったこともありますし、今でも田舎の子どもたちはそうしていますよ。

賀川: 1950年にワールドカップに初出場したイングランドの選手は、ブラジルの子供たちがボールだけでなく、果物でもボロ切れでも、丸い物なら何でも足で扱うのを見て驚いたそうです。それで自分でもやってみたがうまくいかなかった、と言っていました。

――それだけサッカーが生活の中に浸透しているにもかかわらず、自国開催で勝てなかった。「失望のどん底」ということでしょうか。

賀川: 第2次世界大戦で食料輸出国だったブラジルは経済的に豊かで、20万人収容のマラカナン・スタジアムを作って第4回大会を開催しました。リーグを順当に勝ち上がったものの、最後にウルグアイに負けてしまった。失望のあまり60人以上が心臓発作で医務室に担ぎ込まれ、自殺した人も何人かいたという、それぐらいの大ショックでした。ウルグアイにも、喜びのあまり心臓麻痺で亡くなった人が3人いたそうですが…。


■審判の目から見たサッカー

――ブラジルやワールドカップなど、さまざまなお話が出ましたが、お聞きになっていかがですか。

辺見: うまくだまされたり、ごまかされたり、審判としては、ブラジル選手にいい印象は持っていません。サントスさんのことは信頼していますが、ブラジルの選手に対しては、「ごまかされないぞ」と思ってやっています。

大西: 私も、試合前に配られたメンバー表に外国人選手の名前があると、まず出身地を確認します。
でもサントスさんは非常に紳士的な方です。今でも覚えているのが、J1での初レフェリーのこと。私がイエローカードを出すべき場面で出せなかった時、当時エスパルスにいらしたサントスさんは「あなたはグッドレフェリーだ。でも今のはイエローだ」と指摘されました。

サントス: ブラジル人は、貧しいがために「人生に勝とう」という気持ちが生まれ、"ずる賢さ"を自然に身に付けるのでしょう。ポルトガル語で「マリーシア」というその"ずる賢さ"は、プロサッカーの世界には必要といわれますが、私は好きではありません。ある程度は必要ですが、ほどほどに、です。サッカーにはルールがあり、それを守ることがスポーツ選手として一番大切。ですから私は審判がイエローカードを出せばそれを認めます。

賀川: ほどほどにということで、フェアプレーにしても何にしても、色んな意味でバランス感覚がいいからこそ、サントスは40歳になっても続けていられるんですよ。

――さて、今日は岡田正義さんからビデオメッセージが届いています。岡田さんは、前回のワールドカップで主審を務められました高田さんに続いて2人目の日本人主審です。

賀川: アジアのレフェリーもレベルが上がってきましたが、日本人はまだまだ"芝居"が下手ですね。ファウルをしっかり取れても、それを相手に示す動作がうまくない。しかし最近の若い人は上手になりましたから、岡田さんに続いて、これからどんどん世界に出て行くことでしょう。

<岡田氏ビデオコメント> 初めてのワールドカップ出場

 ワールドカップ出場が目標だったので、マルセイユ・ベロドロームスタジアムのフィールドに立った時は、目標を1つ達成できたという嬉しさでいっぱいでしたね。試合中は、普段自分のやっていることをどれだけ出せるかが勝負だと思っていましたので、あがることもなく、平常心でできました。よく見せようなどと考えると、やはりうまくいかない。「自分にはこれしかできない」と割り切って、それに徹するのがよいと思います。

 担当カードは「イングランド対チュニジア」でしたが、試合中は、ただ「白チーム対赤チーム」としか考えていませんでした。あの時の試合は、自分の中で一番いいジャッジができたと思います。試合後には負けたチュニジアの選手も握手をしに来てくれましたし、満足感がありましたね。
 フランス大会にはアジアから4人のレフェリーが行きましたが、みんないい仕事をしましたね。あの時に、アジアのレフェリーの評価がフランスで上がりました。


――前回のワールドカップの体験談を踏まえての岡田さんのお話でしたが、日本の審判が世界から評価を得るというのは、たいへん嬉しいことですよね。

賀川: 今回は日本が出場することで、「ここでミス(ジャッジ)をしないでほしいな」など、観客の審判を見る目も変わります。でも日本人は意思を表すジェスチャーが問題なだけで、それ以外のレベルは高いですよ。

――イングランド対チュニジア戦では最初、イングランドの選手がわざと倒れていて、岡田さんは、「自分を試している」と感じたそうです。

賀川: それはあるかもしれませんね。僕は最初上から見ていて、ちょっと(ファウルを)とるのが少ないかなと思っていましたけれど、それを挑発と捉えていたのなら、余裕があったということですね。

大西: 岡田さんからは、日常的な振る舞いからも何か違うものを感じます。一歩でも近づきたいものです。

サントス: 岡田さんが笛を吹いているのを、私はテレビで応援していました。98年ワールドカップでは日本代表を応援していましたし、今後も日本サッカーが世界レベルに達するよう手助けするつもりです。日本が世界で認められるためには、やはりワールドカップで結果を出すことが必要なのです。

<岡田氏ビデオコメント2> 審判からみた日本選手と海外選手の違い

 精神的な強さは、海外の選手のほうが上ですね。日本の選手はファウルをされて倒れこんでいる選手が多いけれど、外国の選手はそれでもすぐに立って前に行きます。

辺見: 精神面もそうですが、サッカーに対する考え方が違いますね。少々ファウルされても前に行く、それが国の強さに出てくるのでしょう。Jリーグでは審判がファウルをとるから選手が強くならないのだとも言われますが・・・。レフェリーも選手も気持ち的に強く出ていけば、日本サッカーはもっと楽しく、強くなります。

大西: (海外の選手は)切り替えが早い。ファウルを取ってもらえなくても、引きずりません。
 
賀川: 足が引っかかって、転んだ方がいい場合もありますが、今は簡単に転ぶと、シミュレーションをとられてしまう。そこで一度踏ん張ってから倒れればレフェリーはファウルを取ってくれるかもしれない。けれど、レフェリーが笛を吹いてくれることを期待するのではなく、笛がなるまでプレーを続けてほしいものですね。

――日本とブラジルの審判の違いは何でしょう。

賀川: 審判というのは、サッカー全体の国力の表れなんですよ。例えば、エクアドルの審判がアルゼンチンとブラジルの試合の笛を吹いたとしたら、両国の選手はまず信用しない。ブラジルの第一級、アルゼンチンの第一級の審判というのは、重みがあります。どちらも国内リーグのレベルが高いですからね。ブラジル、アルゼンチンもそうですが、イングランドやドイツの審判も昔から信用がありますよ。日本も、サッカー自体の国力が上がれば、レフェリーも当然世界から信用されるようになります。

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